手洗いやうがい、マスク、消毒、換気、ソーシャルディスタンス…健康を守るための手段は色々ありますが、一番大事なのは「免疫力」です。体にはウイルスや細菌などの外敵と戦う免疫システムが備わっており、これを高めることで健康維持に努めることができます。風邪をはじめ、インフルエンザ、アデノウイルス、新型コロナウイルスなどの外敵から身を守るために、この免疫力を高める方法を5つご紹介します。
もともと私たちの体に備わっている免疫力。その正体は、外敵から身を守る機能です。免疫には2つの働きがあり、体にウイルスや細菌を侵入させないための「防御」、そして体内の敵と戦うための「攻撃」があります。この2つの働きがあり、病気から体を守ることができるのです。
□外敵の侵入を防ぐ「防御」の粘膜免疫
体の中にウイルスや細菌、花粉などが侵入してこないように守っているのが、「粘膜免疫」です。目や鼻、口、腸管などの粘膜がこれに当てはまります。風邪を引いたときのくしゃみや、花粉症のときの鼻水はこれらの粘膜免疫が働いているために起こる症状です。粘膜で異物が体内に入るのをブロックし、体外に出すことで感染を防いでいます。
□体内の敵と戦う「攻撃」の全身免疫
ウイルスや細菌などの病原体が粘膜免疫を突破して体内に侵入し、増殖すると体がそのウイルスに感染してしまいます。そうなったときは、体の中にいる病原体と戦う「全身免疫」が活躍します。この全身免疫では、樹状細胞やマクロファージ、リンパ球などの免疫システムを守る細胞たちが病原体を排除するために働きます。体調不良のときに熱が出るのは熱に弱い病原体をやっつけるためであり、下痢は病原体を体外に排出させるために行われる免疫反応です。また、この全身免疫は体外からの病原体だけでなく、体内で発生したガン細胞などを常にチェックし、撃退する働きもします。
病原体から体を守る免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるリスクが高まるだけでなく、ガンなどの病気を発症するリスクも高まるので注意が必要です。また免疫力が低下することで、食中毒や口内炎、歯周病、心臓病、糖尿病、膠原病、慢性リンパ性白血病などの恐ろしい病気をも招きやすくなります。
さらに免疫力が低下しているときは血行が悪くなるケースが多く、新陳代謝が低下してしまい、肌や髪、爪などにトラブルを抱えやすくなることもあります。健康だけでなく、美容面にも悪影響を及ぼすため、日頃から免疫力を高く保つ努力が大切です。
免疫力の低下は、加齢や冷え、疲労、運動不足、喫煙、ストレス、過度な飲酒、睡眠不足などの問題が原因で起こります。加齢は避けることのできないものですが、基本的には生活習慣を見直すことで、免疫力を高めることができます。そのための方法として挙げられるのが、「笑い」「温める」「適度な運動」「食生活」「質の良い睡眠」の5つです。これらを意識して日々を過ごすことで、病原体に負けないための免疫力を手に入れることができます。
【1】健康に欠かせない武器「笑い」
「病は気から」ということわざを聞いたことはありませんか。まさにその通りで、笑うことによって免疫力を高めることができるのです。科学的にも証明されており、『The International Journal of Psychiatry in Medicine』の学術記事では10人の男女を対象としたIgA濃度の研究結果が掲載されています。IgA濃度とは、体内のIgA抗体の量であり、このIgA抗体は免疫機能に関わる重要な物質です。この研究ではコメディアンによる笑えるような映像を見た場合と、教育的な映像を見た場合の唾液中のIgA濃度を比較しており、前者ではIgA濃度が上昇しているのに対して、後者では変化がなかったとのことです。
また、笑うことは体内で発生したガン細胞などを攻撃する「ナチュラルキラー細胞」を活性化させることにもつながります。ですが、赤ちゃんが1日約400回笑うのに対し、大人は1日15回程度しか笑わないそうです。作り笑顔でも免疫力は高まることが分かっているので、意識的に笑うように心がけてみましょう。
【2】冷えは万病の元だからこそ「温める」
体温が1℃下がると免疫力は30%低下するといわれているように、低体温だと免疫細胞の活動性が低下してしまいます。逆に、体温が上がって体が温まると免疫力が高まり、免疫細胞のリンパ球が大幅に増加するそうです。
だからこそ、体を冷やさずに温める工夫をしましょう。生活上で特に気をつけたいのが、冷たいものを摂りすぎないようにすることです。アイスを食べたり、氷を入れた飲み物を飲むのは控えるようにして、冷蔵庫で冷やした飲み物も避けるのが大切です。できれば常温以上、理想は体温以上温めて飲むことが免疫力アップにつながります。夏野菜なども体を冷やすので、寒い時期に夏野菜ばかり食べないように心がけるのも工夫の一つです。
【3】運動不足を回避する「適度な運動」
免疫細胞を活性化させるものとして、適度な運動が挙げられます。筋力が低下すると新陳代謝も低下して血行不良や冷えなどのトラブルを招きやすくなるため、ウォーキングやジョギング、サイクリング、スイミングなどの有酸素運動をして運動不足にならないように努めましょう。
ただし、アスリートが風邪を引きやすいように、激しすぎる運動は免疫を落とす要因の一つです。汗をかく程度の運動を習慣化するのが大切です。
【4】健康な体を作る「食生活」
免疫力を高めるために大事なのはバランスの取れた食事です。体を作る材料となる栄養が偏っていては、どんなに運動や笑いで努力しても免疫力を上げるどころか下げてしまう結果になりかねません。バランスの取れた食事を前提としてその上で、免疫力を高めるために特に積極的に摂りたいのが「腸内環境を整える食品」「タンパク質」「抗酸化成分を含む野菜」「ビタミンC」です。
□腸内環境を整える食品 腸の環境を整えて働きを活性化することで免疫力が高まります。ヨーグルト、納豆、キムチ、食物繊維を多く含む食材など
□タンパク質 免疫細胞や皮膚や粘膜の材料となるタンパク質は、免疫機能に欠かせない栄養素です。肉、魚、豆腐、大豆製品、乳製品など
□抗酸化成分を含む野菜 抗酸化作用によって免疫細胞の数を増やしたり、活性化したりできます。1つに絞るのではなく、多種類の野菜をたくさん食べることが効果的です。
□ビタミンC 粘膜を丈夫に保つために摂りたい成分がビタミンCです。水溶性ビタミンのビタミンCは不足しがちなので、サプリメントなどで意識的に摂るのがおすすめです。
【5】自律神経を整える「質の良い睡眠」
睡眠は体を休めるために必要であり、睡眠時間が少ないと体の回復力が低下してしまいます。すると免疫細胞の数も少なくなるだけでなく、働きそのものが低下してしまうため、毎日しっかりと睡眠をとるように心がけましょう。
また、自律神経の交感神経が過度に緊張していると免疫力は低下してしまいますが、夜更しをしたり、睡眠不足だと交感神経が緊張しやすくなります。寝ているときは副交感神経が優位になり、免疫力が高まります。睡眠時間の確保だけでなく、枕を気道が確保されやすい高さに調整して呼吸をしやすくしたり、アロマをたいてリラックスできる空間を作るなど、睡眠環境を整えるようにするのも大切です。
不摂生や偏食、乱れた生活習慣を送っていると免疫力はガクンと低下してしまうものです。健康を失ってから後悔する前に、免疫力を高めて健やかな毎日を送りましょう。