綾子:よく木戸先生のお話で「地域」とか「地区」っていうキーワードが、すごく出るなと思っているんですけど、商売をやる上ではやっぱり一番大事ですか。
木戸先生(以下:木戸):エステサロンというのは基本的に地域ビジネスですよ。地域ビジネスの視点でやらないと。大手サロンは、エステではなく大手サロンのブランドが先に出ているので、それと同じようにやっては駄目なんですね。地域ビジネスであり、季節美容とか季節性というものが一番お客様に刺さって響くので、その辺りに対する感覚というものを磨いていかれないといけないのです。そのような情報を集める手段も知らない、集めてもない。これは野球に例えると、「毎日私は素振りをしています」と言っているのと同じです。正しい素振りの仕方も知らないのに素振りをしてもね。
綾子:そうですね。当たらない素振りっていうことですよね。
木戸:ですから、うまくいっている人は別に自分のやり方で唯我独尊的にどんどんやったらいいと思います。そういう人は1割も満たないと思うし、経営センスが生まれつきある人は大抵の方々は、やはりしっかり勉強をして苦労をして自分に投資をして初めて見つけていけるものだと思います。
綾子:なるほど。そうか。
木戸:僕も実際にWEBをはじめ色々な知識を付けるために多額の自己投資もしました。そういう情報に辿り着くまでに騙されて、一生懸命勉強に行っていたら、「なんか、これおかしいわ」と自分の中で途中から気が付くような感じが分かりました。やはりどんどん正しいものを見る目が養われてきますよね。それがズバリであったらそれはすごく幸運だし時間のロスもないし、本当に一番よく知っている人の所で、習ったりとかすることを、やっぱり模索した方がいいですよね。
綾子:それがやっぱり情報のプラットフォームである研究会だったり、研修会だったりするんでしょうか。色々地域の話も出ましたが、どうして地域一番店にならないといけないんですか。
木戸:一番になると、当然ですけど人も金も情報も時間も集まるんですよね。足元商圏という考え方があって、10分圏内、車で10分、自転車で10分、歩いて10分とか、10分圏内の所のお客様が90%を占めると思っていいでしょう。遠くから来ていらっしゃるお客様はいつか離れますし、まずは足元圏内の2キロくらいの商圏の所のお客様にまず知って頂いて、うちに対する付加価値とか魅力を感じて頂けるための、どうやったら感じて頂けるかというような情報の流し方、伝え方、安心感とか信頼感とか限定性とか、お客様の声とか。どうやって伝えていったらいいのという所の手法をどれくらい知っているかという部分での競争には今はなっています。
綾子:そうか。1番になるとそこでは1番っていうことですもんね。
木戸:そうですね。人は1番しか覚えられませんし、オリンピックの競技で1位になった人とかは覚えていますよね。
綾子:金メダルは覚えています。
木戸:それが2番目とか銀メダルの人ってどうですか?名前を言える人って相当のマニアだと思います。
綾子:そうですねマニアですね。
木戸:それと同じで、2番っていうのはなかなか覚えられないと思いますよ。日本で2番目に大きい湖だって、りんごの生産地第2位だって、なかなか覚えている人いないと思うんですよね。
綾子:そうか、そうですよね。2番目以降は知らなかったり覚えていないですね。やはり経営能力というのも、しっかりと勉強をして、磨いて、きちっとした知識を入れていく、勉強するということが大事ですかね。
木戸:自社のサロンの悩みを解決できる、ズバリソリューション的な、問題解決できるような答えを持っている所に集まっていかないと、そうでないと意味がないんですよ。でも、現実では世の中の98%くらいはやっていらっしゃらないのではと思っています。
綾子:そうですね。
木戸:刺さる言葉としては、例えば「情報を捨てる」とかね。どの情報を捨てたらいいかということに関して。要は「経営に対してはというのを分かっていないでしょ。だから色々沢山勉強するだけでしょ」みたいなことです。何を捨てて、何を選択すればいいかっていうのが大事なので。その視点とか視野、そういう物の見方を養うことが1番のコツなのです。伸びるコツを分かっていないと、本質的なものからズレていくので、段々枝葉の所とか主流の方ばっかり追いかけ始めるので、しんどくなりますよ。
綾子:そうですね。新しい物だけを追いかけていくとか。流行りのものだけを追いかけていくとかという所ですかね。
木戸:うわべだけね。分かることが分かっていない人ってやっぱり伸びないですよ。分かっている人だけが伸びていきますから。分かってるつもりになっている人が多いので、それはまた困ったもので。それがまた壁にぶつかるたびに、自分が駄目だと思うんですよ。そうではなくて、単純に言えばマーケティング的にお客様でどんな人を集めているのか。どんな人をターゲットにしているのか。どんな人がなぜアップセルという単価アップしないのか。正しく理解できていないですよ。
綾子:それは学びによって、まずは景色を得ます、それをまず真似してやってみるということが大事ですか。
木戸:そうですね。真似して真似してオリジナルになる。コピー&コピーはオリジナルなんですよ。例えば、化粧品を売ろうとしたら、化粧品のためのフェイシャルを売ります、これでは駄目なのです。僕からすると、うちのサロンでフェイシャルを受けたことがある人とない人にまず分けます。それに例えば幹細胞なら「幹細胞〇〇メニュー」って作らないと、お客様には伝わらないです。そういう一つひとつの事が正しく見えていないと、ただ「フェイシャルを付けます」とか「化粧品のセットにフェイシャルを6回付けます」みたいなことをやってしまうんですよ。それは感覚がずれていて、本当に分かってないなと思いますよ。お客様に刺さる、響く情報量や知識が足りていないのです。その事も分かっていないんだと思います。自分の思いのままに痩身をやってたらお客様も来るから、ファンがいるように思ってしまうんですよ。そのあと季節過ぎたら来なくなっちゃう。
綾子:来なくなっちゃう。今来ません、みたいな。
木戸:夏が過ぎたら、もう冬は駄目なのよねというようなことをすぐ思ってしまうようだと、もう終わっているのかと思いますよね。来てくださっていたお客様に何をしていたのか?アフターフォローは何をしたのか?夏から秋にかけて何をしたのかを振り返ってもらうと、「DMは出しました」だけ。何の仕事をしてるのかを考えて欲しいですね。勘違いしていることに気づきちゃんと経営しないと駄目です、本当に。
綾子:そうですね。
木戸:経営しないとサロンで一生幸せに暮らせないですよ。
綾子:研究会や研修会で、サロンの先生方に学んで頂きたいことって何ですか。
木戸:研究会とか研修会で学んで欲しいこと。一番は「目の前のお客様に刺さったり、響いたりする伝え方」ですよね。
綾子:伝え方。そうか、それ。
木戸:後は「イメージの湧かせ方」、やっぱり是非とも学んでいただきたいと思います。
綾子:逆に言うとそれができていないから、集客ができないとか。クロージングができないとか、そんな話になるのでしょうか?
木戸:そうです。クロージングができなくなりますし、デモンストレーションとかプレゼンテーションもうまくいかなくなりますよね。集客に関してはやっぱりキャッチコピーも含めて、お客様が知りたい情報をうちの商品にカスタマイズして合わせられるかどうかですよね。その力が要ります。その力を磨いていかないと駄目だし、センスなのである意味そこはどんどん磨いていかないと、自分のやり方でずっとやっていても当たらないですよ。自分の発信能力をつけなければそれは無理じゃないですか。
綾子:それは勉強して磨けば何とかなるものですか。
木戸:なります。当然なります。勉強をすればするほどなりますね。
綾子:勉強すればするほど。こんな感じの人がこうなったよというような事例を教えていただけますか。
木戸:ホットペッパービューティーで、今までよりワンランクプランを落としても、お客様の新規数は増えているとか。
綾子:増えているんですね?
木戸:増えた方はいっぱいいます。
綾子:すごいな。
木戸:本当にいっぱいいますよ。それは当然です。SNSで商品が売れるようになったとか。お客様がいらっしゃるようになった人はいっぱいいますね。当然です。
綾子:最初は出来なかった方たちですか。
木戸:最初はみんな出来ないのが普通なので、当然ですよね。出来る人は勉強会来ないですよ。普通。まあ、本当にわかっていない人も研究会には来ませんが。
綾子:なるほどですね。最終的に差が出るのは、皆さん出来ない所から始まるんだけど、やっぱり気付いて勉強をしたか、してないかで、全然変わっていっちゃうっていうことですね。
木戸:そうですね。前の会社の有名な会長から「人は気付いた所から初めて勉強を始めたらいいので、気付くまではしなくてもいい」と言われたのは、僕にはすごく有難い言葉で、いまだに受け止めています。人って気が付いた時に初めて勉強をし始めたらいいんです。分からないな、馬鹿だなと思ったんですけど。でも気付くまではしなくていいんだよみたいに、本人に言われたんです。あれで目から鱗が5、6個落ちましたね。そうなんだと。
綾子:確かに勉強をすればするほど、自分の無知が分かる気がします。
木戸:そうなんですよ。急に分かって。自分でやったつもりだったんだと思って。
綾子:そうか。知った気になってるっていうことですかね。
木戸:分かっているつもりで、やっぱり行動や業績の結果が出ないのは分かっていない証拠ですね。世の中、出た実績が自分の実力ですし。どんなに出来るって言っても今出ている実績があなたの通信簿であり、評価なので、そこを鏡として正しく向き合い、何が課題かを捉えないとダメだと思うのです。顧客が来ないって言っても、来ないんじゃなくて、あなたはお客様に何をしたのか。何をしたら良いと思っているのという所ですよね。それを分かっていかないと駄目ですよね。あなたの考え方でやっているからうまく行っていないので。実際そうなんですから。
綾子:今の実績をまず見て、自分の実力を分かり、そして。
木戸:本当はそれを数値化して、このカウンセリングをしたら7割決まるとかね。数値化出来るところまで落とし込まないと、仕事ではないですよね。
綾子:良かった感じがするとか、そういうことではいかんっていうことですね。その程度だと仕事ではないということですね。
木戸:そういうことは、経営ではなくて。
綾子:趣味の店。
木戸:趣味の領域からちょっと商売の領域になっているかな。商売も基本的に経営じゃないですから。単年度すごい業績上げても、翌年悪いですから。
綾子:「商売=経営」ではない。
木戸:ない。全く違いますね。
綾子:では、最後に木戸先生が考えるサロンの経営とは?
木戸:「集客と商品の販売技術」この2つですね。それを身に付ける所は必ず勝てます。経営はドミナント的に4~5店舗地域で商圏内のシェアを取って、4~5店舗経営されて、理念をベースに短期で人材育成できるような教育プログラムと、環境というのをうまく作っていくということが次のステップですよね。それやったら、まず第一段階完成です。
綾子:なるほどですね。そうか。まずお客様を集めて、経営を伸ばし。
木戸:例えば川崎なら川崎市で4~5店舗作って、このドミナントの商圏で、売上が商圏内シェアで1位じゃないですか。4~5店舗あるから大手サロンも売上で負けてしまうんですよ。しかも大手サロンはこの1店舗の売上しかないですかし、わざわざ川崎に3店舗出店しないですから。だからここに4~5店舗出して、ドミナント的にやると、ここの地区で一番になると勝つんです。このサロンが。まず、そこまでやった方がいいですよね。
綾子:地域といっても、人口数が多いとか大小様々あると思うのですが、関係なく4~5店舗ですか?
木戸:そうですね。例えば地元に根差して、10万人の都市でもいいから4~5店舗やってもいいですね。
綾子:そうなんですか。
木戸:ローカルに行けば行くほど、物販比率が高くなるので。当然。
綾子:なるほどですね。これは駅に一個。それもちょっと地域によるとは思うんですけど。
木戸:色んなやり方やパターンがあります。例えば痩身なら痩身サロンとか、フェイシャルならフェイシャルサロンで、普通の痩身サロンを出して、高級店を出して、ディスカウント店を出して、3つとも経営するというやり方もあります。同一商圏内で。
綾子:それ、違う名前でやるのですか?
木戸:そうです、同じ経営者で違う名前です。もし最初に行ったサロンが嫌だと別のサロンに来るじゃないですか。そうしたらどうしてもうちなんですよ。
綾子:どっちにしてもオーナーは同じだったという。
綾子:話は変わるのですが、サロンの先生から悩みを聞くと、「育成・教育」のことで悩んでおられることが結構多いのですが、こういう事もまずは仕組みがあるのでしょうか。
木戸:教育で大事なのは初期教育なんですよね。初期教育、ひいては面接、採用。
綾子:初期教育は入ってからじゃなくて、その前の段階ですか?
木戸:求人の時にどんな人をターゲットにして、その人に対してメッセージを伝えられるような求人記事広告を出すかですよね。地域で一番店になりたい人来てくださいとか、うちは何県でトップになりますと載せていたら、そういう意識のない人達は来ないじゃないですか。適当に働く人は応募して来ないんですよ。そういう一つひとつの打ち出し方からスタートして、場合によってはインターンシップとかそういうのもあるんですけど、どういう人を採りたいかというのをはっきりして、求人していかないと駄目ですよね。人によっていい職場、仕事場って違うんですよね。求職者のレベルが一番大切です。
綾子:今、人材不足と言われていまして、沢山人が欲しいからと言って、気軽に出来るよとか、誰でもいい的な記事は駄目っていうことですよね?駄目というか、本当はきちっとした人が欲しいんだけど、複数の人が欲しいがために求人広告会社の営業の人に言われるがまま敷居を下げてしまうような求人方法はちょっと違っていると。
木戸:今は基本的に人材の欲求水準が明確に決まり始めているので、昔のように素材とか技術みたいに会社に入って急に化ける人の数が減っているんですよ。
綾子:化ける人の数が減っている。
木戸:今は情報量が増えているから、ガキ大将のような方がいなくなりましたし。その人に情報が集まっているので、元々私は適当に家をベースにこういう人生を送るんだというのが固まっていて、それが昔みたいに会社に入って、どうなるかっていうのはないんですよね。いい人材、よくない人材は初めからはっきりしています。
綾子:私たちの時代とは違って、新人だから真っ白で、これからどうなるかワクワクっ楽しみだわというのが、二十歳なのにすっかり生き方を決めている人の方が多いということですか。
木戸:多いですね。
綾子:なるほどですね。
木戸:昔だったら情報量がなかったので、入ったら何かあるんじゃないか。何かこれはあるんじゃないかなっていうので、洗脳されやすかったし、啓蒙されやすかったんですけど、今の人達にはそれは無理なので、どちらかというマスメディアの情報の方が多いので、労基に訴えようとか、ユニオンに言おうみたいな。そんな人が多くて。急に退職はメール1本で出来るように、あそこに5000円でお願いすればいいやとか、そういう情報ばかり飛び交っていますから。毎日SNSでそればかり発信してきますから。だって、仕事で悩んでいる人は仕事で悩むから、そのワードで打つので、当たり前ですけどシークレットモードがあるようにその人に適切な情報しか来なくなりますから。
綾子:そうですね、ということは、自分が欲しい所から採るように、やっぱりこれもターゲットの絞り込みっていうことですね。
木戸:そうですね。もう一つは入った人の初期教育の中で、お客様を作るのがあなたの仕事ですよ、という事を教えこむことですね。あなたの仕事は自分のお客様、会社のファンのお客様を作ることが仕事です、ということを初期教育で徹底的に刷り込めるかどうかなんですよね。仕事をすることが仕事だと思うから、仕事量とか、これを一生懸命やっていたらいいとか、真面目に来ていたらいいとか、勤怠がっていう話になるわけですよ。そうでなくて、大切なのは生産性とか付加価値だから、お客様を作ることがあなたの仕事。あなたのお客様とか、会社のお客様とか。ということを刷り込んでいった方がいいですよね。
綾子:そうか。ここが肝なんですね。
木戸:肝ですね。
綾子:今の時代の教育っていうことですね。分かりました。色々聞けました。最後にお聞きします。今後のエステ業界の未来像は?
木戸:エステ業界の市場がこれからもっと拡大していくためには、サロン本来の利益率と一人当たりの生産性を上げる必要性があります。そのビジネスモデルを皆さんが本気で追及しないといけないので、一人当たりベッド1台100万とか、一人当たりの売上100万とか、そこの概念を早く抜け出ることですよね。だって物販入れたら、150にもなってるじゃないですか。変わってくるのでそこの概念を変えていかないと、生産性=人数じゃないですか。それだけですよ。
綾子:そうか。ちょっと私も間違えていました。改めて。
木戸:生産性=人数なので、自分が目一杯頑張ってこうするとか、目一杯お客様入れて…ではなくて、アップセルで来たお客様に何を売るのか、どんな提案をしていくのか、どんなお客様をうちは作っていくのかとか。お客様をどう変えていくのか?ということが仕事なので、本当の繁盛店はお客様を育成します。自分も変わりながらね。自分も変わりながら、自分の影響でお客様を変えていく力を持っていらっしゃるので。それが本当の意味でプロじゃないですか。お客様に何かを売るんじゃないんですよ。まず化粧品でしたら、お客様に化粧品を買わせたいというのはまず間違っているので、消費設定が間違っていますけど、お客様に使いたいと思っていただいた上で、最終的にはお客様自身がうちの中で美容に対して、美意識が上がるという感覚をどんどんバージョンアップさせるための雰囲気とかキャンペーンとか、仕組みとかの作り方の仕組みが大事ですよね。お客様を信者にしていく仕組み作りが大切です。
綾子:そうか。全部ここですね。ここがきちっと出来ていると、きちっと売上も上がるし、後、スタッフ教育もここがやりがいですもんね。
木戸:そこをどうやって作るかって一番大事ですね。
綾子:そうですね。分かりました。ありがとうございました。