井上敬一先生とと大畑綾子の美容対談<前編>
- 綾子:
- 本日は、株式会社FiBlink代表取締役、一般社団法人恋愛・結婚アカデミー協会 代表理事の井上敬一先生をお迎えいたしました。本日はよろしくお願いいたします。
- 井上:
- よろしくお願いいたします。
- 綾子:
- 井上先生は有名な経歴がおありですよね。「伝説のホスト」と呼んでよろしいでしょうか?
- 井上:
- もちろんです。
- 綾子:
- 元祖カリスマホストですよね。
- 井上:
- 何十年も前ですが。
- 綾子:
- 実は、私も「ザ・ノンフィクション」を見ていました。
- 井上:
- ありがとうございます。
- 綾子:
- 今、なぜこういうことをしているのかも含めて、今までの経歴をお話いただけますか?
- 井上:
- 京都の立命館大学で文学部哲学科哲学を専攻していました。ちょうど僕が大学2年生の時に、母が借金の保証人になったのです。よくある話で、その人がどこかに飛んじゃったんですよね。それで、このままだと自己破産しないといけないかもしれないという話があった時に、僕も大学は奨学金をもらって行っていましたので、これは大学生やっていられないという気持ちになりバイトを始めました。しかし、バイトではどんな仕事も稼げないので、バイトを始めてから3ヵ月目位に大学を中退して、ホストを始めました。当時僕が知っている、稼げる仕事はホストぐらいだったので、すごい怖かったですがホストを始めました。お金を返さなあかんなという美談と、当時若いですから、お金も欲しいなとか、女の子にモテたいなとか、そういう功名心もあったので、ホストに入りました。それが一番最初のきっかけです。それから5年間連続No1でした。
- 綾子:
- すごいですね。
- 井上:
- かなりお金に執着しました。
- 綾子:
- 入った時から一番だったのですか?
- 井上:
- 入ってすぐになりましたね。
- 綾子:
- すごいですね。
- 井上:
- ありがたいことに。とにかくお金が欲しいということで、覚悟を決めていましたからね。そこからNo1をやらせてもらって、1、2カ月連続だったら結構いましたが、俺の場合は、60ヵ月連続No1でしたので、それはなかなかいなかったですね
- 綾子:
- 一番になるということより、それを取り続けることはすごく大変ですよね。
- 井上:
- 綾子:
- 井上:
- すごく大変だと思います。売上で言えば、今のホストの方がもっと上がってる人もいると思いますが、連続No1だったり一晩の売上が1千6百万円だったりといった当時の記録は残させてもらいました。
- 綾子:
- 魅力があって、女性を喜ばせていたということですよね。
- 井上:
- 自分がホストだと限界がありますが、僕の分身となるような従業員をもっと育てて、僕の売上の半分でいいから、それを1人作れればいい、2人作れば自分と同じになるので、これをもっと作ればいいということで、最大150人ぐらいまでスタッフを雇わせてもらいました。東京と大阪でホストクラブのグループを作り、約20年間ホストクラブ経営をやりました。
その頃に、「ザ・ノンフィクション」という番組の取材が入りました。僕は、人間教育の場だと思っていたので、ホストにボランティアさせたり、ごみ掃除させたりをずっとやっていたのです。そういうのがなかなかなかったので、これは面白いということでこの番組に取り上げてもらいました。
- 綾子:
- 私がちょうど見た時は、ご自身が頭を丸めて坊主にされている回でした。他にも何回か拝見したことがあります。
- 井上:
- シリーズ第8弾ぐらいまで放送されています。
- 綾子:
- 「こんな人いるの!」と思いました。
- 井上:
- ちょっと格好つけてやるんですよね。テレビ局は編集がうまいですよ。「ザ・ノンフィクション」の中でも、個人で取り上げてもらったのは一番多いはずです。
ホストの世界を引退した後は、東京の知り合いが復縁サイトをやっていまして、そこで良いコンテンツを出せるなと思ったので、「一回リアルのセミナーやりましょうか」ということで始まりました。それがちょうど4、5年前ですね。3年半ぐらい前から婚活のほうも始めて、今の一般社団法人を立ち上げました。今は、婚活支援や企業の研修も行っています。営業や人材育成など、全部コミュニケーションでうまく行くものですので。それで今があるという、そんな感じですかね。
- 綾子:
- 婚活しているわけではないですが、私もこの前婚活セミナーに出させていただきました。新しい旦那さんを見つけるためにですね(笑)そこで、井上メソッドをお聞きしたのですが、皆さんが覚えやすく、頭に残りやすいように、全てマニュアル化されていて、一番印象的な言葉が、「コミュニケーションはスキルじゃなくてルールだよ」という言葉でした。そのルールをチラッと教えてくださったと思うのですが、それは前職のホストのオーナーをやられている時から作られてきたものなのですか?
- 井上:
- そうです。基本的に、僕のコミュニケーションメソッドは、接客術がベースになっています。その時に48個のコミュニケーションメソッドとして体系化していました。僕らがお金を頂いてやっていたコミュニケーションを、一般の方が特に婚活中の方が、お金ももらわずにやったら、めちゃくちゃ感じの良い人たちが生まれますから。
僕たちは、ホストクラブをやっていると、悪く言われることも多かったです。でも、本当に誇りもってやっていた仕事なので、僕たちが持っていた人に好かれる技術を一般の方に伝えると、「こんなに役に立てるんだ!」と思い、今楽しくやってるのが婚活支援ですね。
- 綾子:
- 私たちがエステティシャンにもよく教えるのが、「エステティシャンもモテてなんぼだよ」ということです。モテるスキル、オーラがないといけないですし、自分の魅力=売上げになるのですね。そこの教育は私含め、他のオーナーさんも非常に苦労しているところだと思います。そういう企業セミナーみたいなこともされていますか?
- 井上:
- していますね。直近で言うと、ある大手ビューティークリニックで、店長さん方に向けて、「自分自身が商品となって接客してください」というコミュニケーションのお話をしました。その前ですと、P社さんでもセミナーをしましたし、一年ぐらい前にはあるエステサロンさんの幹部に向けて、研修をやらせてもらったこともあります。
- 綾子:
- エステのお仕事と共通することは何だと思いますか?
- 井上:
- 一番は対人で販売していることです。商品をネットで売るなら別ですが、人を介して売って、サービスを買ってもらうわけです。なので、商品での差別化はもうできていないところもあると思うんです。人間は感情の生き物だと思っているので、「この機械良いですよ」「めっちゃきれいになりますよ」だけでは、「お前誰やねん!」というほうが先に立ってしまいます。
エステティシャンの売上を上げることは、僕からしたらすごい簡単だとよく言っています。商品やサービスの差別化は、もちろん企業努力としてやらなくてはなりませんが、人の質を上げていくことが大事です。お客様から見て、「なんかこの人に会いに行きたいんだよね」とか、「あなたから買いたい」「あなたにぜひ施術してもらいたい」という、こういう人を見出すということが人の質を上げるという意味ですごく大
事だと思います。そういう意味合いで、皆さんにはよくコミュニケーションを学んでもらっています。
- 綾子:
- 井上さんが美容業をされたら、すぐに成功しそうな感じがしますね。
- 井上:
- 言い方悪いですが、そこはキャバクラと一緒ですよ。やっぱり指名して担当が付くところは同じですからね。
- 綾子:
- 「この人に会いたい」「この人の言うものを買いたい」「この人とお話したい」ということですよね。
- 井上:
- これを見られているサロンオーナーさんでも、人材育成にすごく悩んでいる方もいるかもしれませんが、根本は、どんな施術をするかよりも、誰にやってもらうかです。その誰にというのは、こちらのことを本当に想ってくれているかということです。
営業は、まず相手の悩みや問題を聞き出さないといけないので、話の聞き方や聞き出し方が大事です。基本的に解決策は一緒なので、そこをまずわかってくれたというのが、一番の接客でもあり、営業だと思っています。マナーとかルールよりも、自分に興味を持ってくれているエステティシャンの方がいると、お客さんは嬉しいのではないかと思いますね。
- 綾子:
- そうですね。
- 井上:
- 僕は「コミュニケーションはセンスではなくてルール」とか言っていますが、根本としては、「相手に伝わったことが真実となる」と言っています。相手のことを想っていても、伝わっていなければ想っていないのと同じということです。それをちゃんと伝えるために、話を聞く時は、目を見て、笑顔で、ちゃんと相手に大きく頷くことです。「頷きで相手に風を送るぐらい、ちゃんと頷いてね」と言っています。それ
だけで、聞いてくれてるとなるんです。熱心に聞けば聞くほど、実は固まってしまっていて、全然頷いてないとなると、「この人話聞いてんのかな?」となるわけですよ。自分がどう思っているかより、相手にどう伝わっているかがすごく大事だと思います。
どうやって伝えるかというと、これはやはり質問なんですよね。質問が多ければ多いほど、相手は自分に関心を持ってくれたとなるので、「まず最初に自分からちゃんと質問してね」ということです。業務
の中で、エステであれば、「肌荒れどうですか?」という質問はしてると思いますが、それ以外の質問も投げてもいいということです。「休日どうされてるんですか?」だけでもいいし、「ご兄弟いらっしゃるんで
すか?」と言うだけでも、興味関心を相手に示すことになります。単に仕事だけではなく、人としての興味関心を持ってくれてるという意味では、先に質問して、プライベートな質問も一つや二つ入れることですね。そうするだけで全然違うと思います。単純なことですよ。
- 綾子:
- それがわかっているのとわかっていないのとだと、やはり全然相手が違うということですよね。
- 井上:
- 一生懸命やればいいというものではなく、一生懸命やる努力の方向が違う、目指すべき指標が違うということですね。
~次号へつづく~
井上 敬一
コミュニケーションデザイナー
株式会社FiBlink(ファイブリンク)代表取締役
一般社団法人恋愛・結婚アカデミー協会 代表理事
兵庫県尼崎市出身。立命館大学中退後、ホスト業界に飛び込み 1ヶ月目から5年間連続ナンバーワンをキープし続ける。当時、関西最高記録となる1日1,600万円の売り上げを達成。業界の革命児としてPrinceClubShionをはじめとしたシオングループオーナー業を経て、現在は実業家として企業、個人のブランディングやアパレル、サムライスーツなどのプロデュースを手掛ける他、人に好かれるコミュニケーションを伝える研修・講演を展開している。圧倒的な実績に裏付けられたコミュニケーションスキルをわかりやすく説く講演は、多くの企業・団体から支持を受けている。
また、約20年間のホストクラブ経営の経験をもとに、接客術や人間関係の築き方を活かし、2015年4月から始めた「恋愛・結婚セミナー」は多くの悩める女性を恋愛や結婚の成功に導き、卒業生は150人を超える。これまで数多くのメディアに取り上げられてきた中、独自の経営哲学で若いスタッフを体当たりで指導する姿はフジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』で10年にわたり密着取材され、シリーズ第8弾まで放映されている。